


目次
この記事で分かること
株式会社Digeonが手がけるDXパートナー事業では、基幹システムのリプレイス、そして基幹システムへのAIエージェントの搭載を主に行なっています。
基幹システムのリプレイスにおいて、最も難易度が高く、かつプロジェクトの成否を左右するのが現行システムの仕様把握です。
10〜20年前に構築されたシステムでは、仕様書が残っていない、あるいは現状と乖離しているケースがほとんどです。この状況で新システムの要件を定義しようとしても、現行システムの再現に苦労し、価値のあるリプレイスにならないというケースが多くなってしまいます。
本記事では、この仕様が分からないという課題に対して、弊社がAIエージェントを活用してどのように解決しているかを解説します。

弊社事業の経験上、基幹システムのリプレイスプロジェクトにおいて、現行仕様が正確に把握できているケースは稀です。具体的には以下のような理由で、仕様が曖昧になることが多く見受けられます。
構築から10年以上経過していると、当時ベンダーとやりとりしていた担当者が退職・異動しているという事例は多く見受けられます。当初の仕様書が残っていたとしても、それ以降の改修がある場合に、詳しい仕様や新しくできたモジュールの引き継ぎができないという課題に繋がります。
基幹システムは稼働後も継続的に改修が入ります。事業領域や業務フローの変化、消費税率の変更、組織改編、法改正対応など、その都度修正が重ねられた結果、当初の設計と異なる構造になっていることが少なくありません。
そして多くの場合、これらの改修履歴はドキュメントとして保存されず、仕様の把握がアプリケーションの見える部分でしかできなくなってしまいます。
手元にあるソースコードと、サーバーで動くソースコードのバージョンや更新日が異なるというケースもあり、そうなると実際にサーバーにアクセスしてコードを解析して仕様把握をしなければならないという状況に陥ることもあります。
これまで、仕様が不明なシステムのリプレイスでは、以下のようなアプローチが取られてきました。
これらはいずれも有効な手法ですが、問題は整合性の担保にあります。個別のファイルやテーブルの内容は把握できても、それらがどう関連しているのか、矛盾がないか、全体として整合性が取れているかを確認する作業は、膨大な時間と労力を要します。
特に数百のテーブル、数万行のソースコードを持つシステムでは、人手での網羅的な確認は非常に多くの時間を要し、また信頼性の担保も難儀です。
そこで弊社はコーディングエージェントである OpenAI社の Codex を全社員に無制限で利用可能な環境を提供し、これらの作業を効率的に処理できる仕組みを整備しています。


弊社では、この仕様把握のプロセスにAIエージェントを活用しています。具体的には、OpenAI社が提供する Codex をはじめとしたコーディングエージェントを用いて、以下のような流れで現行仕様を可視化していきます。
今回は弊社が開発している社内向けのERP的なアプリケーションを、OpenAI の Codex を用いて解析していく例を示します。

まず、手元にあるすべての資料を収集し、AIエージェントが読み込める形式に変換します。
これらをMarkdownファイルとして整理し、Git管理下に配置します。Git管理下におく事で、実装フェーズやテストフェーズにおいても整合性を容易に担保できるようになります。
弊社では以下のようなフォルダをプロジェクトごとに作成し、
というような利用をしています。(あくまで一例です)
$ tree docs -d
docs
├── meeting
├── raw
├── references
└── scripts次に、AIエージェントと対話しながら、各資料から仕様を抽出していきます。
例えば、データベースのスキーマ情報を読み込ませた上で、「このテーブル間のリレーションを整理してください」「このカラムの用途を既存ドキュメントから推測してください」といった指示を出すことで、個別の情報を構造化していきます。

抽出した仕様を統合する過程で、AIエージェントに整合性の確認を依頼します。
などの指示により、人手では見落としがちな細かい矛盾も、AIエージェントは機械的に検出できます。

最終的に、統合・検証された情報をもとに、現行仕様書としてドキュメント化します。このドキュメント作成自体もAIエージェントに任せることで、一貫性のある形式で出力できます。
弊社の場合は、先述のdocsフォルダ内に、
などのmarkdownファイルをそれぞれ作成して管理しています。
お客様へ提出する場合には、これらのmarkdownファイルをPDF形式に変換してから提出することで、AIと親和性が高く、かつ人間が共有して読みやすい状態を維持しています。
弊社がAIエージェントを仕様把握に活用することで、以下のような効果が得られています。
従来、数百テーブル規模の基幹システムの仕様把握には、数ヶ月を要することも珍しくありませんでした。AIエージェントを活用することで、この期間を大幅に短縮できています。
特に、ソースコードやDDLの解析といった機械的な作業はAIエージェントが得意とする領域であり、人間はその結果の検証や、業務知識が必要な判断に集中できるようになります。
仕様把握の過程で得られた知見は、すべてMarkdownファイルとしてGit管理されます。これにより、特定の担当者の頭の中にしかない情報という状態を防ぎ、チーム全体で仕様を共有できる体制を構築できます。
また、AIエージェントとの対話履歴も残るため、「なぜこの仕様だと判断したのか」という根拠も追跡可能です。
仕様把握の過程で作成されたドキュメントは、リプレイス後のシステムの保守にも活用できます。
従来のリプレイスでは、新システムの仕様書は作成されても、旧システムからの変更点や、なぜその仕様になったのかという経緯が残らないことが多くありました。
AIエージェントを活用したプロセスでは、旧システムの仕様と新システムの仕様の対応関係も明確になるため、将来の改修や次回のリプレイス時にも役立つ資産となります。
AI駆動の基幹システム開発においては、上記のように仕様を把握してGit管理に置きながらリリース後も継続改修を続けることになるため、ユーザーマニュアルの作成の手間が大幅に削減され、継続的に最新版のユーザーマニュアルを低コストで提供することが可能です。
これにより、仕様書がないので分からない、マニュアルが古くて形骸化する、という従来の基幹システムプロジェクトにおけるあるあるの課題を解決することができます。
本記事では、基幹システムリプレイスにおける最大の課題である「仕様が分からない」問題に対して、AIエージェントを活用した解決アプローチを解説しました。
基幹システムの仕様が不明になる主な原因は、担当者の退職・異動、逐次的な改修による複雑化、ソースコードの不一致の3点です。従来の仕様把握アプローチでは、個別の情報は把握できても、システム全体の整合性を担保することが困難でした。
弊社ではOpenAI社のCodexをはじめとしたコーディングエージェントを活用し、以下の4ステップで仕様把握を行っています。
このアプローチにより、仕様把握期間の大幅な短縮、属人化の排除、リプレイス後の保守性向上、ユーザーマニュアルの継続的なメンテナンスといった効果が得られています。
弊社のDXパートナー事業では、仕様把握にとどまらず、基幹システムリプレイスの全工程を支援しています。
仕様把握で得られた現行仕様をもとに、要件定義、設計、開発、テスト、移行までを一貫して対応します。各工程においてもAIエージェントを活用し、品質と生産性の両立を実現しています。
また、リプレイス後のシステムへのAIエージェント搭載も支援しています。例えば、基幹システムのデータを活用したデータ分析エージェントや、定型業務を自動化するエージェントの構築など、リプレイスを単なる刷新ではなく、付加価値をプラスした投資対効果が明確なリプレイスが可能です。
基幹システムの仕様が分からずリプレイスに踏み切れない、現行ベンダーとの関係で相談しづらいといった課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
著者


山﨑 祐太
山﨑 祐太
山﨑 祐太
山﨑 祐太
山﨑 祐太
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