AI類似図面検索で50%の業務効率化と、後継者への知識の継承を実現
株式会社山岡製作所


株式会社山岡製作所
「30年の経験を持つベテランが工程設計や見積業務を担う」これは多くの製造現場で見られる構図です。
プレス金型・プレス加工の株式会社山岡製作所様では金型製造部の井上様が、長年培った“経験”と“知識”を武器に、工程設計と見積業務を担当されていました。しかし、同時に後継者不足とスキル継承の難しさの課題を抱えていました。
「後継者を育てる必要があるが、その前に自分の“頭の中”を仕組みに落とし込むシステムと、それを実現できるAI技術が必要でした。」と井上様は振り返ります。
井上様:弊社は、プレス金型やプレス加工を手掛ける会社です。多様な製品に合わせて毎回工程設計や見積を行っています。
しかしこの業務については、担当者個人の経験と知識に大きく依存している部分がありました。
私自身、30年間培ってきた“経験”や“知識”を次世代へ継承するためにも、業務を仕組み化する必要性を強く感じていました。
井上様:3〜4年前に社内でDX推進チームが立ち上がった頃から、セミナーや展示会を通じて最新技術の情報収集を行っていました。
ただ、当時は「AIは先端的な技術だが、実用化にはまだ遠い」という印象がありました。しかし、ここ1〜2年でChatGPTのようなAI技術が身近な存在となり、実用段階に近づいてきたと感じました。
そこで「そろそろ実際の現場で使えるAIシステムを導入できるのではないか」と思い、AI類似図面検索システムを切り口に、社内に蓄積されたノウハウを仕組み化・システム化するプロジェクトを始めたのです。
井上様:既製品のパッケージやSaaSはあらかた試しましたが、どうしても細かい要望を実現できないという課題がありました。
弊社の知識・経験を仕組み化するためには、「過去事例をもっと柔軟に検索したい」「特定のフォルダ命名規則を考慮した検索をしたい」といった特有のニーズを実現しなければなりません。
従って「しっかりとお金を払ってでも、弊社の要求を理解し、カスタマイズを行い、実現まで導いてくれるパートナー」という軸で探していました。
井上様:複数社とお話ししましたが、ディジョンさんは私たちの要求をすぐに理解し、どのようにAIやシステムとして実現するかを明確に示してくれました。
他社さんの中には提案段階でこちらがイメージするゴールに追いついていない印象を受けるケースもありました。
しかし、ディジョンさんはコミュニケーションがスムーズで、要望がきちんと伝わっていると実感できました。「この会社なら、私たちが求める“頭の中の仕組み化”を本当に形にできる」と思えたことが決め手でした。
井上様:今回最も重要視したのは検索性の向上です。
10万枚を超える膨大な過去図面から必要な図面を抽出するには、類似図面検索におけるAIの高い精度が必要です。
また、類似図面検索だけではなく、業務に適した図面を抽出するために、図面に関連するメタデータの付与とそれによる絞り込み検索が重要になります。
AIの精度向上はディジョンさんにお任せしながら、図面のメタデータ付与のために、運用ルールの整備を徹底的に行いました。
井上様:このAI類似図面検索システムを導入したことで、必要な図面とその関連書類を参照する時間が大幅に短縮できました。また、そもそも必要な図面を見つけられないという問題もなくなり、過去情報を参照しながら効率的に業務を進められています。
従来は社内フォルダで一定のルールで図面管理をしており、そこから図面を探すという業務を行っていました。
しかし、必要な図面に辿り着くには、どの顧客の、いつ実施した、図番が何の案件か、といったことを記憶から呼び起こして探さなければなりません。そのため時間を要し、そもそも見つけられず、参考元がないまま工程設計や見積もりを行うこともありました。
検索性にこだわって詳細を詰めておいて良かったなと感じています。
井上様:コミュニケーションは非常にスムーズに行えました。
特にSlackを活用したリアルタイムのやり取りが良かったですね。こちらから疑問や不安を投げかけると、即座に回答が返ってきたのが印象的です。
例えば、最終的な回答が翌日になる場合でも、「今から調査するので、明日中には回答します」といったメッセージを細かく入れてくれ、安心しながらプロジェクトを進められました。
週次の定例会議でも進捗や課題、改善策を双方で明確に共有できていました。プロジェクトマネージャーやエンジニアの皆さんが、常に現場の声に耳を傾け、かつ専門的な視点から具体的な解決案を提示してくれたことで、「このプロジェクトは着実に前進している」という安心感を得られました。
井上様:過去の図面や関連資料を探す時間が格段に短縮されました。
その結果、リピート製品における業務時間が大幅に短縮され、新規製品に対してしっかりと時間をかけて工程設計と見積業務ができるようになりました。
また、検索した図面や関連ファイルを参照しながら「前回はこの協力会社に依頼したので、今回もここに相談しておいて」といったコミュニケーションがしやすくなり、説明時間の短縮や齟齬の低減に繋がっています。
井上様:図面内の一部分を指定しての類似検索機能を構築し、図面の検索性を高めることを検討しています。また、OCR(文字認識)技術を活用して、図面内に記載された文字情報も検索精度向上に活かせれば、さらなる効率化が期待できます。
井上様:図面検索をフックにした経験・知識の継承や業務の効率化は、規模を問わず多くの製造業の会社の役に立つ取り組みだと思います。
そのためには単にAIやシステムを導入するだけでなく、実際の業務がどのように変わるべきかを見据えて動かなければなりません。
自社に合わせた最適なAIによる経験・知識の伝承、業務の効率化を目指したい場合は、ディジョンさんと一緒にプロジェクトを進めるのが良いのではないかと思います。
製造業界全体において、長年培われたノウハウを「AI×システム」によって次世代に継承していくヒントが詰まったお話だったと思います。今後とも貴社に良いAIを提供できるよう、尽力いたします。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
今回のプロジェクトにおける技術的な挑戦は、業務の文脈に即した”類似”図面検索をAIで実現することでした。
AI類似図面検索を業務で活用するには、単純な画像類似度だけでなく、製品・部品種別、外観図などの図面の種類による区別、公差記号の有無など、業務に即した“類似”を定めて実現していく必要があります。
何を持って類似と判断するのかについて議論を重ね、様々なユースケースを想定したデータセットを手配して画像認識モデルを学習することで、業務に即した“類似”検索を実現しました。
また精度検証においては、定量的な精度だけではなく、お客様からの定性的なフィードバックも非常に重要視しております。数値だけでは推し量れない感覚的な側面も、エラー分析を元にした改善のサイクルを回してAIに落とし込むことで、業務で役に立つAIを実現できました。